前の記事で、二見文庫『ハード・ウェイ』は映画と違うところがいっぱいと書きました。具体的にどう違うかについて、何記事かに分けて書いていきます。今回は、モスがニックを褒めて「ありがとう」を言う場面についてです。
ハード・ウェイ (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション) | J.R. ロビテイル, 静子, 堀内 |本 | 通販 | Amazon
小説では、ニックがパトカーでパーティー・クラッシャーと対峙し、警察署で取材を受けた後、署内にいるモスに別れを告げに行く場面があります。そして以下のようなやりとりがあります。
- ニックは思いがけないことに、うまく言葉が出てこない。
- モスが、パーティー・クラッシャーと5分以上いて生きてるニックを褒める。
- モスがニックに視線を合わせ、何度も言葉に窮しながら、自首するために戻ってきたのは肝がすわっていると褒める。
- モスがニックに、映画館で危険を顧みずパーティー・クラッシャーが狙っていることを大声で知らせてくれたことについて「ありがとう」と感謝を述べる。
- ふたりの間に敬意が流れ、ニックははじめてモスに人間として認めてもらえたと思う。
- 互いに「またな」と言って別れるが、モスはニックが去るのを見ても、あまり嬉しくなれない。
あんなにニックを追い払いたかったモスが嬉しくないなんて!
この部分を読むまで気づきませんでしたが、実はニックは度胸がいる凄いことをやってるし、モスの命の恩人なんですよね。それを小説で補って教えてくれた著者ロビテイルに感謝です。
実際読むと分かるのですが、台詞に「……」がたくさん。2人が言葉に詰まりながらも心を通わせる様子が見事に表現されています。私はロビテイルを”「……」の魔術師”と呼んでいます。