『ハード・ウェイ』の中で、スタッフからスピルバーグに赤ちゃんが生まれたと聞いてプレゼントとカードを贈るよう指示するニック。しかしスピルバーグが受賞スピーチで自分の名前を言わなかったとぼやきます。
この授賞スピーチ、英語では「AFI speech」と言っています。AFIは米国映画研究所のことです。二見文庫ノベライズ版は、スピルバーグではなくシモンズという監督に置き換わっていますが、「米国映画研究所のスピーチ」と書いてあります。
映画製作者を教育し、アメリカにおける映画芸術の遺産を顕彰するアメリカの映画団体。民間資金と一般会員の会費によって運営されている。
AFI映画祭というのを毎年開催したり、「生涯功労賞」を提供したりしていますが、スピルバーグがこの「生涯功労賞」を受賞したのは1995年(4年後)なので、当時は架空の話だったようです。
実は、ニックの名前を言わなかった授賞スピーチというのは、スピルバーグとマイケル・J・フォックスの実話に基づいているそうです。
スピルバーグは1986年にアカデミー賞の証の一つであるアービング・G・タルバーグ賞を40歳という異例の若さで受賞しました。受賞には当然『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が寄与しています。
ところが、『SCREEN』1991年7月号p.91によると、受賞スピーチでマイケルの名前に触れなかったそうなのです。
ニックのセリフは、案外、マイケルが本心で言っているのかも。スピルバーグに付け届けはしたことがあるけど、やはり秘書に頼んだので何を送ったかは覚えていない、なんて語っております。
引用元:近代映画社『SCREEN』1991年7月号p.91
まさかプレゼントをスタッフから適当に贈らせるシーンも実話に基づいていたとは。秘書に頼むというのは、やはり確執を感じますね。